「個人情報が漏えいしたかもしれない」――その一報が入った瞬間から、企業は時間との勝負に入ります。個人情報保護法では、一定の要件を満たす漏えいについて、発覚から3〜5日以内の「速報」、30日以内(不正目的の場合は60日以内)の「確報」を個人情報保護委員会に報告し、あわせて本人への通知も行うことが義務づけられています。本記事では、発覚直後の初動対応から、報告義務の要件、本人通知、公表の判断、そして2026年7月に公布された改正個人情報保護法(課徴金制度)までを、中小企業の実務担当者向けに整理します。
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個人情報の漏えいは、「起きるかどうか」ではなく「起きたときにどう動くか」で被害の大きさが変わります。報告や通知が遅れれば、法令違反として行政指導・命令の対象になるだけでなく、後手に回った公表は「隠していたのでは」という不信感を招き、二次的な信用失墜につながります。
一方で、初動対応の担当者・期限・判断基準があらかじめ社内で共有されていれば、混乱のなかでも冷静にステップを踏むことができます。多要素認証(MFA)・パスキーや生成AIの入力禁止ルールが「漏えいを起こさないための予防」だとすれば、本記事は「起きてしまった後、どう対応するか」を扱う内容です。
2026年も、国内で大規模な個人情報漏えいが相次いで公表されています。
共通しているのは、発覚から公表まで、決して短くない調査・確認の期間を経ていることです。裏を返せば、この期間にどれだけ的確に事実関係を整理し、報告・通知の要否を判断できるかが、その後の対応の質を大きく左右します。
「漏えいしたかもしれない」という一報が入ったら、次の対応を同時並行で進めます。順番に一つずつこなす余裕はありません。
※すべての漏えいで直ちに報告義務が生じるわけではありません。ただし、報告対象事態に当たるかどうかの判断には時間がかかるため、判断を待たずに初動対応(①〜④)を並行して進めることが重要です。
個人情報保護法では、個人の権利利益を害するおそれが大きい漏えい等が発生した場合、個人情報保護委員会への報告と本人への通知が義務づけられています(法26条1項、施行規則8条)。報告は「速報」と「確報」の2段階です。
報告事項には、事態の概要、漏えい等した個人データの項目、対象となった本人の数、原因、二次被害またはそのおそれの有無、本人への対応の実施状況、公表の実施状況、再発防止策など、施行規則第8条第1項に定められた項目があります。報告は、個人情報保護委員会のウェブサイト上の報告フォーム、または権限が委任されている場合は当該事業所管大臣等に対して行います。
個人情報保護委員会規則では、次の4つの事態を「報告対象事態」と定めています。いずれか一つでも当てはまれば、報告義務が生じます。
中小企業でよくある誤解は、「大した個人情報ではないから大丈夫」という判断です。しかし③の不正アクセス経由や④の1,000人超は、情報の中身に関わらず報告対象になるため、「うちは関係ない」と決めつけず、まず4類型に照らして確認することが欠かせません。
報告対象事態に該当する場合、個人情報保護委員会への報告に加えて、漏えいした個人データの本人に対する通知も義務づけられています。通知の内容は、報告事項のうち本人に関係する事項(漏えいした情報の項目、発生原因、二次被害の可能性、問い合わせ窓口など)が基本です。
本人への連絡先が判明しない、通知に多額の費用を要するなど、通知が困難な場合には、事案の公表その他の本人が容易に知り得る状態に置く措置をもって通知に代えることが認められています。中小企業の場合、自社サイトでの公表と問い合わせ窓口の設置が現実的な代替措置になることが多いでしょう。
個人情報保護法上、公表そのものが一律に義務化されているわけではありません。しかし、本人への通知に代える手段として、また社会的な説明責任として、公表が実質的に必要になるケースがほとんどです。判断のポイントは次のとおりです。
2026年7月17日に公布された改正個人情報保護法(令和8年法律第56号)では、個人データを違法に取得・利用・第三者提供した事業者に対し、不当な利益に相当する額を徴収する課徴金制度が新設されました。あわせて、16歳未満の子どもの情報や顔認証などの生体情報についても規律が強化されています。施行は公布から2年以内(2028年7月16日までに政令で定める日、罰則強化の一部は2027年1月17日に先行施行)の見込みです。
この改正は、報告・通知の義務そのものを変えるものではありませんが、「うっかり漏えいさせてしまった」だけでなく「違法に取得・利用・提供していた」ことが判明した場合の経済的なリスクが、これまでより大きくなるという点で無視できません。生成AIに個人情報を入力しない・目的外に利用しないという入力ルールは、この課徴金制度への備えという意味でも、これまで以上に重要になっています。
※このセクションは制度の要点を整理したものであり、法的なアドバイスではありません。自社の対応については、法務部門または弁護士にご確認ください。
発生してから慌てて調べるのではなく、「誰が」「何を」「いつまでに」やるかを、事前に一枚のフローとして決めておくことが実務上の要です。最低限、次を明文化しておきましょう。
委託先で漏えいが発生した場合の連絡ルート(委託元への即時報告義務)も、契約段階であらかじめ取り決めておくと、発生時の初動が格段に速くなります。
漏えいを完全にゼロにすることはできません。だからこそ、「起きたときにどう動くか」をあらかじめ決めておくことが、企業を守る最後の防波堤になります。
バンブーハウスでは、ホームページ制作・システム開発からセキュリティ対策・インシデント対応体制の整備まで、中小企業のデジタル活用をワンストップでサポートしています。漏えい発生時の初動対応フローづくりについても、お気軽にご相談ください。
すべての漏えいが対象になるわけではありません。①要配慮個人情報の漏えい等、②財産的被害のおそれがある漏えい等、③不正の目的で行われたおそれがある漏えい等、④1,000人を超える漏えい等——この4類型のいずれかに該当する場合に、報告義務が生じます。判断に迷う場合は、早めに専門家に相談してください。
速報は事態を知った時点からおおむね3〜5日以内、確報は事態を知った日から30日以内(不正の目的で行われたおそれがある場合は60日以内)が期限です。速報の時点ですべての事項を把握できていれば、1回で速報・確報を兼ねることも可能です。
情報の性質によります。クレジットカード番号やネットバンキングのID・パスワードなど財産的被害のおそれがある情報、要配慮個人情報、不正アクセスなど不正の目的による漏えいは、人数に関わらず報告対象になります。人数だけを基準に「報告不要」と自己判断するのは危険です。
漏えいした情報の項目、発生原因、二次被害の可能性、問い合わせ窓口などを本人に通知します。連絡先が判明しない、通知に多額の費用がかかるなど通知が困難な場合は、事案の公表など「本人が容易に知り得る状態に置く措置」をもって通知に代えることが認められています。
個人情報保護法上、公表そのものが一律に義務づけられているわけではありません。ただし、本人への通知に代える手段として、また社会的な説明責任として、実務上は公表が必要になるケースがほとんどです。調査が完全に終わるのを待たず、分かっている事実から段階的に公表していく進め方が一般的です。
原則として、個人データの取扱いを委託した委託元(個人情報取扱事業者)に報告義務があります。委託先で漏えいが発生した際、速やかに委託元へ連絡が入るよう、契約段階で報告ルート・期限を取り決めておくことが重要です。連絡が遅れると、委託元側の速報期限に間に合わなくなるおそれがあります。
2026年7月17日に公布された改正個人情報保護法(令和8年法律第56号)は、報告・通知の期限や要件そのものを変えるものではありません。個人データを違法に取得・利用・第三者提供した事業者に対する課徴金制度が新設された点が主な変更です。ただし、これにより不適切な取扱いが発覚した場合の経済的リスクは、これまでより大きくなっています。
はい。バンブーハウスでは、漏えい発生時の初動対応フローの整備、社員向けセキュリティ研修、Webサイト・システムのセキュリティ強化までワンストップで支援しています。中小企業の体制や既存システムに合わせたご提案が可能ですので、お気軽にご相談ください。