人 × ソフト × ハードで守る
AIの悪用で、偽のメールや偽のサイトは本物と見分けがつきにくくなりました。メールを受け取っただけで被害が出るわけではありませんが、添付ファイルを開く・リンクを押す・パスワードを入力するといった操作をきっかけに、社内のパソコンが乗っ取られ、ホームページの管理システムやサーバーまで被害が広がるおそれがあります。このページでは、想定される被害と、初歩的なBASIC認証から多要素認証(MFA)・CSRF対策までの守り方を、「人・ソフト・ハード」の3つに分けて、専門用語なしで解説します。
結論:対策の基本は「スタッフの知識」です。そのうえで、システム側の対策(ソフト)と機器・ネットワーク側の対策(ハード)を組み合わせて、はじめて効果が出ます。どれか1つだけでは、必ずすり抜けられる場面が残ります。たとえば「管理画面は社内からしか接続できない」という制限があっても、社内のパソコンそのものが乗っ取られれば、攻撃者は「社内の人」として通過できてしまいます。
以前は「日本語が不自然」「差出人が怪しい」ことで見抜けた偽メールが、AIの悪用によって、取引先や社内の人から届いたような自然な文面で作られるようになりました。
偽メールに含まれる不正な添付ファイルやリンクを開くと、社内のパソコンが不正なプログラムに感染したり、偽のログイン画面にパスワードを入力して盗まれたりします。その結果、ホームページの管理システム(CMS)やWEBサーバーに侵入され、内容の改ざん、情報の漏えい、表示や更新の停止といった被害につながります。大切なのは、メールを受信しただけで、ただちに被害が発生するわけではないという点です。被害のきっかけは、ほとんどの場合「開く・押す・入力する」という人の操作です。だからこそ、スタッフの知識が最初の守りになります。
たとえるなら、偽メールは「宅配業者そっくりの訪問者」。インターホンが鳴っただけでは何も起きませんが、ドアを開けて招き入れると家の中に入られてしまいます。AIの悪用によって、その訪問者の制服や話し方が、本物とほとんど見分けがつかなくなっているのが今の状況です。
偽メールから始まる攻撃は、おおむね次の4段階で広がります。どの段階で止められるかによって、被害の大きさが変わります。
社内のパソコンが乗っ取られた後に起こりうる被害は、主に次の5つです。
管理システムにログインしたままのパソコンが乗っ取られると、攻撃者はその「ログイン済みの状態」を使って、本人になりすまして操作できます。「社内からしか接続できない」という制限では防げず、操作の記録を見ても本人の操作と見分けがつきにくいのが特徴です。
感染したパソコンからIDやパスワードが盗まれると、攻撃者はそのパソコンを「社内の正規の端末」として使い、管理システムにログインします。営業時間・イベント・料金などの情報が改ざんされるほか、社内のほかのパソコンやサーバーへ被害が広がるおそれもあります。
ホームページを更新する権限を奪われると、リンク先の差し替えや、不正なプログラムの埋め込みが行われます。お客様が偽の予約・購入サイトへ誘導され、クレジットカード情報などを盗まれるといった、自社の外にまで被害が広がり、信用を大きく損ないます。
パソコン内のファイルやメールに残されたサーバーの接続情報や管理者パスワードは、いわばホームページの「合い鍵」です。これを盗まれると、管理画面を通らずにWEBサーバーやデータの保管場所へ直接侵入され、長い間気づかれないまま悪用されるおそれがあります。
ホームページのデータが削除されたり、暗号化されて読めない状態にされたりすると、表示も更新もできなくなります。バックアップまで同じ場所に置いていて一緒に壊されると、元に戻すまでに長い時間がかかります。
セキュリティ対策というと「機器を買う」「ソフトを入れる」をイメージしがちですが、実際には次の3つの層があり、それぞれ守れる場面が異なります。「ハードを入れたから安心」「ソフトを入れたから安心」ではなく、3つを同時にそろえてはじめて意味があります。
スタッフ一人ひとりの知識と、社内のルール。偽メールを開かない、パスワードを使い回さない、異変をすぐに報告する、といった行動です。費用がかからず、今日から始められる一番の基本です。
管理システム(CMS)やWEBサーバー、パソコンの中の「設定」や「プログラム」で守る対策です。目には見えませんが、ログインの確認や不正な操作の拒否など、仕組みとして自動で守ります。
ルーターやファイアウォールなどの機器、ネットワークの分け方、バックアップを保管する装置など、「物」として設置して守る対策です。入口を絞ったり、壊されたときに戻せる場所を確保したりします。
※WAF(ウェブアプリケーションファイアウォール)のように、機器としても、クラウド上のサービス(ソフト)としても導入できる対策もあります。分類よりも、「どの場面を守る対策なのか」を知っておくことが大切です。
どの対策にも、単独では防げない場面があります。下の表の「補う対策」まで組み合わせることで、弱点を互いに埋め合えます。
| この対策「だけ」だと… | すり抜けられる場面 | あわせて必要な対策 |
|---|---|---|
| IP制限(社内からのみ接続) ハードソフト | 社内のパソコンが乗っ取られると、「社内からの接続」として通過されてしまう | 多要素認証、不正操作対策、PC側の感染対策 |
| BASIC認証 ソフト | ブラウザにIDとパスワードを記憶させたパソコンを乗っ取られると素通り。共有・使い回しのパスワードが漏れると無力 | 多要素認証、パスワード管理(人) |
| 多要素認証(MFA) ソフトハード | すでにログインしているパソコンを乗っ取られると防げない。身に覚えのない承認通知をうっかり承認してしまう | 画面ロック・ログアウト(人)、不正操作対策、身に覚えのない承認をしない知識(人) |
| CSRF・クリックジャッキング対策 ソフト | 外部サイト経由の不正操作は防げるが、感染したパソコンを直接操作される場合は防げない | PC側の感染対策、多要素認証、スタッフの知識 |
| ウイルス対策ソフト ソフト | AIで次々に作られる新しい手口は、検知しきれない場合がある | スタッフの知識、システム側の対策 |
| バックアップ ハードソフト | 同じサーバーや同じネットワーク内に置いていると、一緒に削除・暗号化される | 別の場所への保管、ハードニング、復旧手順の確認 |
| スタッフの注意 人 | AIで作られた偽メールは本物との見分けが難しく、個人の注意だけですべては防げない | システム側の対策(ソフト・ハード)と相談できる体制 |
家の防犯にたとえると、門の鍵(IP制限・BASIC認証)、玄関の二重ロック(多要素認証)、留守中に勝手に操作されない仕組み(CSRF・クリックジャッキング対策)、使っていない勝手口をふさぐこと(ハードニング)、大切な物を別の場所に預けること(バックアップ)、そして家族全員の戸締まりの習慣(スタッフの知識)。どれか1つが欠けても、そこから入られてしまいます。
ホームページの管理システムやサーバーを守る対策を、取り組みやすい順に並べました。「分類」は、主にどの層で行う対策かを示しています。
| 段階 | 対策 | 分類 | 何を防ぐか |
|---|---|---|---|
| STEP 1 | BASIC認証 | ソフト | 管理画面の手前にもう1枚の扉を置き、外から管理画面にたどり着きにくくする |
| STEP 2 | IP制限 | ハードソフト | 決められた場所(社内など)以外からの接続を受け付けない |
| STEP 3 | パスワードの見直し | 人ソフト | 長く推測されにくいものに変え、使い回しをやめて、漏れたパスワードでの侵入を防ぐ |
| STEP 4 | 多要素認証(MFA) | ソフトハード | パスワードが盗まれても、それだけでは不正にログインできないようにする |
| STEP 5 | 不正操作対策(CSRF・クリックジャッキング) | ソフト | 外部のサイトを通じて、ログイン中の担当者に意図しない操作をさせる手口を防ぐ |
| STEP 6 | システムの堅牢化(ハードニング) | ソフト | 使っていない古いファイルや機能を整理し、侵入のきっかけを減らす |
| STEP 7 | バックアップとPC側の感染対策 | ハードソフト | 万が一壊されても元に戻せるようにし、入口となるパソコンの感染を防ぐ |
BASIC認証は、管理画面を開こうとしたときに、ブラウザがIDとパスワードの入力を求める仕組みです。WEBサーバーの設定だけで導入できる、最も初歩的な対策です。管理画面の場所を知られても、すぐにはログイン画面までたどり着けないため、機械的に大量のログインを試す攻撃の入口を減らせます。
IP制限は、接続元の住所にあたる「IPアドレス」を見て、社内など決められた場所からの接続だけを受け付ける仕組みです。ルーターやファイアウォールなどの機器(ハード)でも、サーバーの設定(ソフト)でも行えます。外部からの不正ログインに対しては非常に有効です。
管理システムやサーバーの管理画面で使うパスワードを、長く推測されにくいものに見直したうえで、対応できる管理画面から順に「多要素認証」を導入します。多要素認証は、IDとパスワードの入力に加えて、スマートフォンなどでも本人であることを確認する仕組みです。確認方法や日々の操作手順を共有し、スタッフ全員が使えることを確かめながら段階的に進めることで、万が一パスワードが盗まれても、それだけでは不正にログインされにくくなります。詳しくは多要素認証(MFA)・パスキー導入ガイドで解説しています。
管理システムにログインした状態で不正なサイトを開くと、そのサイトに仕込まれた指示によって、本人が意図しない情報の変更や削除が行われることがあります(CSRF:クロスサイト・リクエスト・フォージェリ)。これを防ぐため、管理画面から送られる変更・削除などの指示に「正規の操作であることを確かめる情報」を付け、システム側で照合し、確認できない指示は受け付けないようにします。また、管理画面を別のサイトの中に埋め込み、関係のないボタンに見せかけて押させる手口(クリックジャッキング)も、埋め込みを禁止する設定で防ぎます。導入後は、通常の登録・変更・削除の作業が問題なく行えることを確認します。
この対策は「外部のサイトを通じた不正な操作」を防ぐものです。感染したパソコンを直接操作される場合とは異なるため、ログイン時の本人確認の強化などとあわせて行います。仕組みの詳細は不正操作対策(CSRF・クリックジャッキング)で解説しています。
管理システムやWEBサーバーの中を確認し、現在は使っていない古いファイルや機能を整理します。使われていないものでも、外部からアクセスできる状態で残っていると、不正な侵入のきっかけになることがあります。普段の更新作業では目に触れないため、古いまま残っていても気づきにくい点に注意が必要です。ホームページの表示や更新に必要なものかを確かめ、影響がないことを確認したうえで不要なファイルや機能を削除することで、攻撃に悪用される箇所を減らし、管理しやすい状態に整えます。具体的な対象は古いファイルの整理とハードニングの重要性をご覧ください。
管理システムへの接続を社内に限定していても、社内のパソコンが乗っ取られたり、担当者のログイン情報が盗まれたりすると、不正な侵入につながります。一方で、AIを悪用した偽のメールやサイトは本物との見分けが難しく、個人の注意だけですべてを防ぐことはできません。スタッフ全員が基本的な対処方法を知ることに加え、迷ったときに相談できる体制を整えることが大切です。
差出人の名前や自然な日本語だけで、本物のメールと判断しないようにしてください。知っている相手の名前でも、メールアドレスや依頼内容に不自然な点がないか確認しましょう。
心当たりのない添付ファイルやリンクは開かず、判断に迷った場合は担当者へ相談してください。「至急対応してください」「アカウントが停止されます」など、急がせる内容にも注意が必要です。
パスワードの入力を求められた場合は、メール内のリンクを使わず、普段利用しているブックマークなどから正規のサイトを開いて確認してください。送信者への確認が必要なときは、メールに書かれた連絡先ではなく、以前から把握している電話番号などを使いましょう。
管理システムのパスワードには、ほかのサービスと同じものを使わないでください。使い回していると、別のサービスから漏れたパスワードを使って、不正にログインされるおそれがあります。
長く推測されにくいパスワードを設定し、会社で定めた方法で安全に管理してください。個人に割り当てられたIDやパスワードは、ほかの人と共有しないようにしましょう。
多要素認証の導入後、スマートフォンなどにログインの確認が届いた場合は、自分が行った操作によるものかを必ず確認してください。
自分でログインしていないのに確認が届いた場合は、第三者がログインを試みている可能性があります。繰り返し届いても承認せず、担当者へ報告してください。また、確認コードをメールや電話などで他人に伝えないようにしましょう。
管理システムでの作業中は、業務に関係のないサイトの閲覧や、不審なメールの確認を避けてください。
席を離れるときは、パソコンの画面をロックしてください。作業が終わったら、管理システムの「ログアウト」を操作してからブラウザを閉じましょう。ブラウザを閉じるだけでは、ログイン状態が残る場合があります。
また、パソコンやブラウザ、セキュリティ対策ソフトの更新は社内の管理方針に従って行い、保護機能を自己判断で無効にしないようにしてください。
「怪しい添付ファイルを開いてしまった」「偽サイトかもしれない画面にパスワードを入力した」「身に覚えのない変更がある」といった場合は、被害が確認できていなくても、すぐに担当者へ報告してください。
その際は、いつ、どのようなメールや画面で、何をしたのかを、分かる範囲で伝えてください。不審な画面での操作を続けたり、自己判断でメールやファイルを削除したりせず、担当者の指示を受けましょう。
早めの報告が、被害の拡大を防ぐことにつながります。操作ミスを責めるのではなく、速やかな相談・報告を優先できる環境を整え、報告先と対応手順を全員で共有しておくことが大切です。
不審なメールの特徴や、パスワードの管理方法、異変に気づいたときの報告手順などを、定期的な研修で確認することをおすすめします。
また、偽のメールを想定した訓練を行い、「開く前に確認する」「迷ったら相談する」「開いてしまったらすぐに報告する」という行動を練習することも有効です。知識を身につけるだけでなく、実際に困ったときに誰へ相談し、どう行動すればよいかを、スタッフ全員が分かる状態にしておくことが大切です。
誰でも間違えることはあります。大切なのは、隠さずに早く知らせることです。次の3つの順番を、スタッフ全員で共有しておきましょう。
「結局、自分は何をすればいいのか」を立場ごとにまとめました。チェックが付かない項目から順に取り組んでください。
受信しただけで、ただちに被害が発生するわけではありません。被害のきっかけは、添付ファイルを開く、リンクを押す、パスワードを入力するといった操作です。判断に迷ったら開かずに担当者へ相談してください。確認の仕方は不審なメールは、開く前・入力する前に確認するをご覧ください。
入口を減らす初歩的な対策として有効ですが、それだけでは不十分です。通信が暗号化(https)されていることが前提で、ブラウザにIDとパスワードを記憶させたパソコンを乗っ取られた場合や、IDを共有している場合は効果がありません。多要素認証などとあわせて導入してください。
パスワードの盗難には強くなりますが、万能ではありません。すでにログインしているパソコンを乗っ取られた場合は防ぎきれません。作業後のログアウトや画面ロック、身に覚えのない承認通知を承認しないといったスタッフの行動と組み合わせてください。
ログイン中の担当者に、外部のサイトを通じて意図しない操作をさせる手口です。CSRFは不正なサイトに仕込まれた指示で勝手に変更・削除を実行させ、クリックジャッキングは管理画面を別のサイトに埋め込んでボタンを押させます。詳しくは不正操作対策(CSRF・クリックジャッキング)で解説しています。
どちらか一方ではなく、人・ソフト・ハードを組み合わせることが前提です。まずは費用をかけずにできるスタッフの知識とパスワードの見直しから始め、管理画面の多要素認証と不正操作対策、古いファイルの整理、別の場所へのバックアップの順に整えるのが現実的です。考え方は対策は「人・ソフト・ハード」の3層で考えるをご覧ください。
それ以上操作せず、すぐに担当者へ報告してください。メールやファイルを自己判断で削除せず、「いつ・どのメールで・何をしたか」を伝え、担当者の指示に従います。手順は「開いてしまった」ときの初動をご覧ください。
はい、対応しています。迷惑メール対策、パスワード管理、多要素認証などを、実例や演習を交えてお伝えします。詳しくは情報セキュリティ講習会の講師派遣をご覧ください。
はい、まずは無料でご相談いただけます。管理画面の入口の守り方、多要素認証や不正操作対策の有無、古いファイルの残り具合、バックアップの保管状況などを確認し、優先順位を付けてご提案します。お問い合わせからお気軽にご連絡ください。
このページで紹介した対策は、それぞれ詳しい解説ページをご用意しています。
PEOPLE
メールセキュリティの基本
偽メールや添付ファイルへの注意、ブックマークからのログインなど、スタッフの基本を解説します。
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MFA
多要素認証(MFA)・パスキー導入ガイド
本人確認の仕組みと、承認通知を悪用する手口への備えを解説します。
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CSRF
不正操作対策(CSRF・クリックジャッキング)
ログイン中の担当者に意図しない操作をさせる手口と、その防ぎ方を解説します。
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TREND
AIで弱点を探すサイバー攻撃が急増
AIを使って公開サーバーの弱点を自動で探す、最近の攻撃の傾向を解説します。
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HARDENING
古いファイルの整理とハードニング
放置された古いファイルが侵入口になる理由と、堅牢化の主な対策を解説します。
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SECURITY
セキュアサーバー開発
WAF・CDNによる多層防御と24時間監視で、ホームページの運用を安全に支えます。
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INCIDENT
個人情報漏えい発生時の初動対応・公表フロー
事故が分かった後の対応と、誰が何を行うかを事前に決める重要性を解説します。
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TRAINING
情報セキュリティ講習会の講師派遣
迷惑メール対策やパスワード管理、多要素認証を、実例と演習で学べます。
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竹内勇人